何年も前から出回っている3種類のロゴ。国/地域によって色が分かれているという情報とともに出回っていますが、これは間違いです。
発端
Which swirl do you most connect with? For me is Orange! 🍊
— SuperSisi (@supersisi_) 2024年5月3日
Orange = Japan
Red = USA
Blue = UK/European#dreamcast #sega #retrogaming pic.twitter.com/fRQ0vUc3jQ
こちらのpostが回ってきたので。コミュニティノートも付いて、投稿した本人も間違いを認識したようなのですが、このpost以前から多くの人が認識違いをしているような気がするので改めて情報整理した方が良い、正しい色を書いた方が良いと思ったので。
日本版とUS版は同じ色
セガハードの開発に携わった戸崎健司氏は以下のようにpostしています。
Dreamcastの名前やロゴは、世界統一で使用することを前提としてコンサルティング会社が案を考えた。販売エリア別に変える予定はなかった。EUだけ事情により青になった。オレンジは共通だけど、ゲーム機本体印刷や紙の印刷物、画面表示色で色味が違うのは、それだけ微妙な色合いだからだと思う。
— マルコンたろう (@Tosaki_c01) 2024年5月5日
もしもロゴの色が違うのであれば、ドリマガでそのことに言及していてもおかしくないだろう、とザッと見たところ以下のような記述*1がありました。
US版については、
本体の外見は日本とまったく変わらない。
欧州版については、
日本のDCを踏襲したアメリカバージョンとは異なり、ロゴマークをドリームオレンジからブルーに変え、ノーブルな雰囲気を醸し出している。
と記載されています。
また、起動時に表示されるロゴデータは日本版とUS版で同じ色であることが確認されています。
(2/5) One thing is for sure: only two color variants existed in terms of console boot-up animations between JP, NA, and PAL territories (not including devkit variants).
— Derek Pascarella (ateam) (@DerekPascarella) 2024年5月5日
In Japan and North America, this is the *actual* logo I've extracted directly from the BIOS (hex BB3322). pic.twitter.com/XhevV7JJL4
これらのことから日本版とUS版が同じオレンジ系の色で、欧州版のみが青系の色と考えて良さそうです
正しい色は
ロゴ使用規定に正しい色指定が記載されています。
ドリームオレンジ
TOYO 88:CF0122
(M80%+Y100%)
「ドリームオレンジ」とはこのロゴの規定に併せて定義付けられた名称で、「TOYO 88:CF0122」は東洋インキの色見本番号、「M80%+Y100%」はCMYKです。
欧州はこれ。
Metallic Pantone 8183
Pantone 659
69C 38M
「Pantone」はPantoneの色見本番号(「Metallic Pantone 8183」が使用できない場合に限り「Pantone 659」で代用可とのこと)、「69C 38M」はCMYKです。
それぞれの色を並べるとこんな感じ。
日本版ではTOYO 88:CF0122、US版ではM80%+Y100%、というような使い分けされているものではありません。
ちなみに、ドリマガ*2の入交氏へのインタビューによると、「ドリームオレンジ」は当時セガの会長だった大川功氏が一発で気に入って即決したそうです。
実は大川さんは復職デザイナーをやっていて、家も呉服屋さんだったんですよ。その流れで服のアパレルのデザインをやっていたことがあるんだそうです。「ワシはデザイナーだ。色に関しては俺は見る目があるんだ」って、すごく自信満々なんですよ(笑)。それで一発で気に入ったオレンジ色、名前やマークはいろいろと議論があったんですが、色に関しては簡単に決まったんですよね。
なぜ間違った情報が広まっているのか
目の錯覚
数年前に話題になった「青と黒のドレス」が白と金に見える*3、というように人間の目に見える色は、印刷物やディスプレイの設定・性能、周辺の色や光など様々な要因によって本来の色とは異なる色に見えてしまうことがあります。
恐らく根源を辿るとこれが原因のような気がします。
画面に表示される色
左が実機をHDMIキャプチャした画面、中央がエミュレータ、右が実機を目視した明るさで全体の明度を調整したものです。
キャプチャした画面やエミュレータの画面を初めて見たときは驚きました。元データは背景が白ではなかったんだと。
人によって印象も変わるし設定や環境によっても変わってくると思いますが、赤っぽく見えるのではないでしょうか。
印刷物ではオレンジっぽくても画面では赤っぽく見える、これも原因としてありそうです。
また、当時はブラウン管が主流であり、ブラウン管に映すことを想定して作られているものなので、現在の環境で映すことでまた違った色で見えているのかもしれません。
配布されているロゴデータ
ネット上にはロゴまとめサイト的なところで本家企業とは無関係な形でロゴデータが配布されています。そのようなサイトでは第三者により勝手に作られたベクター画像の配布が多数見受けられます。
ドリキャスのロゴも同様にロゴデータが配布されており、そのベクター画像がオレンジ、赤、青の3種類存在しています。推測でしかないですが、上記の錯覚により「3種類ある」「日本とUSが違う色だ」という情報が広まってしまい3種類作られた、と考えられます。
wikipediaの情報間違い
wikipediaの情報は使い方によっては便利ですが、記載されている情報がすべて正しいわけではありません。ドリキャスのページもそうです。
冒頭のロゴの色が日本語のページと英語のページで別の色が使われてしまっています(執筆時現在)。上記のベクター画像です。
また、ロゴの項目においても間違った記載がされています(2024年11月時点では修正されてました)。
ドア(トレイ)部分に「シンボルマーク(渦巻きとDreamcastのロゴタイプ)」がある。この渦巻きは地域によって配色が異なり、日本とアジア地域ではオレンジ、北米地域では赤、欧州などコンポジット信号にPALを採用している地域では青が使われている。
実機見ればわかるけど日本も北米も同じ色です。
wikipediaは調べるきっかけにはなるかもしれないけど情報の信憑性は微妙です。
まとめ
最初に結論書いてますが改めて、関係者の証言や過去記事、ロゴデータの内容を見る限り、日本版とUS版のロゴは同じ色を使っていると言って間違いなさそうです。
色が違うというのは印刷物や画面に表示された際の光や設定環境、周囲の色によって変わるため。それが原因で勝手に作られたロゴデータが3種類作られ、いつのまにか国/地域によって色が3つに分かれている、という説が流れwikipediaにも載ってしまっている。といった感じでしょうか。
ドリキャスをイメージしたオレンジを使いたい際は何色を指定すれば良いのか、といった場合は、M80%+Y100%、またはドリームキャスト復刻プロジェクトのサイトで使用されている色「#ea5504(RGB:234, 85, 4)」(規定のM80%+Y100%を基にしている色)を使っておけば間違いなさそうです。
そして、もしもロゴの色が何色か聞かれたら「ドリームオレンジ」と答えておきましょう。それで通じるかは知りませんが。